針灸治療室ピア・針灸IN花屋敷の野上佳宏です。
今回は、不妊治療における 「確率」 についてお話したいと思います。
鍼灸による不妊治療の確率のお話ではありません。
そして、あまりにも厳しい現実をお伝えしなければならない、ということを踏まえて
お読みいただければと思います。
今回参考にするのは、2010年に日本産科婦人科学会が出した不妊治療の成績です。
不妊治療の成績とは、今回においては 「妊娠率・生産率・流産率」 をいいます。
先日行われた日本不妊カウンセリング学会の講演で示された2014年のデータを見ると、
2010年と大きな変化は見られませんでした。
この成績において、大切なことが何点かあります。
このデータは、総治療・総胚移植(ET)・総妊娠が分母になっていることをご承知おきください。
女性の年齢別の妊娠率を見ると、例えば40歳における妊娠率は約23%。
これは1周期あたりの妊娠率ではなく、タイミング法・人工授精・体外受精などの不妊治療を行い、
最終的に妊娠できた人の割合を示したものです。
統計の母数に関する情報がないのですが、何らかの治療を複数回行った方が多数と思われます。
そして女性が年齢を重ねれば確率が増えるのが、流産率です。
20代の健康に問題のない女性でも、流産率は約15%といわれています。
35歳を過ぎるころから流産率が上昇し始め、40歳では35%、45歳では65%が妊娠しても残念ながら流産に至ります。
流産の原因はさまざまですが、大部分が避けることのできない染色体異常とされています。
着床しても妊娠が続かない不育症も、染色体異常が原因であることが多いようです。
そして最も大切な数字が、生産率です。
不妊治療をしていると妊娠することに注目しがちですが、やはり赤ちゃんが産まれることが目標です。
生産率とは赤ちゃんが産まれる確率、すなわち生児出産率のことです。
30代を過ぎたあたりから、生産率が低下を始めます。
さらに37歳あたりからは低下率が増し、40歳の生産率は約8%、45歳では1%未満となります。
このデータで忘れてはいけないのが・・・
何らかの不妊治療を行っている群が分母になっている、ということです。
自然妊娠を含めたすべてのご夫婦に当てはまる数字ではないことを、まず理解する必要があります。
そして、何らかの不妊治療を行っている群が赤ちゃんに恵まれる確率は、同年代の中でも
相対的に低い、という結果を現実問題として受け入れることがどうしても必要になってきます。
健康な若いカップルが避妊せずにタイムリーな性交渉を行った場合の
6か月間の累積妊娠率は、約70%といわれています。
参考にしているデータは不妊治療の期間や周期数が反映されていないので単純に比較はできませんが、
何らかの不妊治療を行っている20代後半の方でも妊娠率は約38%で、生産率は約20%。
統計上、20代後半の方でも出産にまで至るのは、5人に1人しかいない、ということになります。
当然、妊娠しにくいがために不妊治療をされるのですが、妊娠・出産を希望される方の中で
実際に妊娠・出産できる方の割合は 「想像以上に低い」 といわざるを得ません。
不妊治療をすれば妊娠できるだろう、体外受精をすれば高確率で妊娠できるだろう、と思われがちです。
しかしこの結果のように最先端の医療を以てしても、妊娠・出産率が飛躍的に上がることは適いません。
そんな中、私たち鍼灸師ができることは、本当にわずかかもしれません。
それでも、たとえ数%でも赤ちゃんを授かる可能性があるなら、
できる限りのお手伝いをして差し上げたい。
できるだけ健康に不安がない状態で、そしてできるだけ前向きな気持ちで妊活をして頂きたい。
そんな想いで、鍼を持ち、お灸をひねりつつ、日々の施術に当たっています。